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ARAIA -クローゼットより愛をこめて-

『南へ』@池袋東京芸術劇場

本日初日!
早速、観てきましたー!(笑)

南へ
南へ

またもや、”ドえらい”テーマをぶちかましてくれました。
野田さんの頭の中は、ほんとにどうなってるんでしょう?(笑)
毎度の事ながら、理解できたかと聞かれると「NO」なんですが、
胸に、心に、魂に、ガツンと響く作品でした。

ブッキー、今回もかなり良いですよぉ♪
聖子ちゃんも髪型がGood!(笑)
あとは銀粉蝶さん&藤木孝さんが最高でした。

ちなみに上演時間は休憩なしの2時間ちょっと。
19時開演で21時ちょっと過ぎには劇場を後にしました。

ってな事で、私的所感の感想を。(ネタバレ注意!)

火の山が大好きな男が、火山観測所に赴任する。その赴任先で待っているのは、虚言癖の女。
やがて、大噴火の噂が流れる。流れるのは、噂だけか。それとも、本当に溶岩が流れ出すのか・・・。
不確かな情報、予知、夢、噂、群がるマスコミ・・・。
「信」じられないものばかりで織りなされる、まことしやかな火の山の物語。(公式サイトより)


まず語りたいのは、今までにも野田作品の内容が上演時に、
その時の事件、世相、世界情勢が見事にリンクするという、神がかり的な奇跡がありました。
1995年に上演された「贋作 罪と罰」では「地下鉄サリン事件」。
2003年に上演された「オイル」では「イラク戦争勃発」
そして今回、2011年の作品は、「火山」=「新燃岳の噴火」がリンクしてました
劇中「白頭山」が出てきますが、この白頭山も近い将来に噴火の兆候があると言われている山。
白頭山ではなく、新燃岳が噴火しちゃって、、、山をも動かす野田作品、おそるべし。(笑)

舞台奥には火山があり、山の頂上からは赤い噴煙のごとく布(紙?)が客席のほうまで延びている。
劇中、その布部分に噴煙が流れるような映像が映されていました。
舞台の両袖には沢山のパイプ椅子が置かれていて、出番を待つ役者が座っていたり、小道具として使われたりと大活躍してました。

今回の作品にはいくつかのキーワードがありましたね。
大きなキーワードとしては「火山」なんですが、「天皇制」、「神」、「戦争」、「マスコミ」、「報道」、「朝鮮(満州国)」って感じでしょうか。
芝居の序盤は、火山が噴火する、しないのドタバタ加減がなんとも面白くて笑っていたんですが、
後半に進むにつれて、色んなキーワードが絡み合ってきて、正直言って、自分の中でも未だに整理できていません。
が、主なキャストとキーワードを絡めた私的感想なんぞ。

妻夫木聡さん:南のり平/ノリヘイ
火山観測所に赴任し、自分を「南のり平」だと名乗るが、それが真実であることを証明しろと言われ、困惑していく。
次第にそれが本当に自分の名前だったのか、自分が何者なのか分からなくなっていき・・・。
キル」に続いてNODA-MAPの参加ですね。
今回は妻夫木くんをイメージして書き上げた新作って事でしたが、難しい役柄ながら熱演してました。
彼は舞台向きなんじゃないかって思いますねぇ。
声もいいし、舞台栄えするし、今後も沢山の舞台に出演して欲しいですね。

で、芝居後半の、300年前の火山での出来事を再現したシーン。
帝の一行が今にも噴火するかもしれない山に登ってきた時に、一瞬にして軍服の帽子をかぶり行進している姿に変わった時は鳥肌立ちました。
しかも妻夫木くんの衣装そのものが軍服に見えて、(やられたー)って思いましたよ。
”ノリヘイ”の名前を奪われ「日本人」と名乗るその男は、帝に山が噴火するからと必死に言うものの、「その言葉が真実であるという証拠を見せよ」と。
刀を取り出し、切腹しようとする名前のない日本人が「知らない人の為に命を懸ける・・・」とつぶやくシーンは衝撃的でした。
これって、戦時中徴兵された朝鮮人の事ですよね。(ってか歴史に疎いので調べた結果ですが。)
朝鮮での名前を奪われ、日本人として戦った朝鮮民族の男が、帝の事を「知らない人」というのは、なんとも残酷な言葉だと感じました。
 
蒼井優さん:あまね/アマネ 
虚言癖があり、その嘘はあまねの口から発せられることで真実のように語られていく。
しかも他人の記憶を、自分の記憶にして生きている女。
舞台で観るのは初めてで。前作の「舞台」は見逃していたので、非常に楽しみにしてました。
ベリーショートの髪型がめちゃくちゃ可愛かったぁ~。
が、初日だというのにすでに声がかすれてて、(もう喉、つぶしちゃった?)って心配しちゃいました。
怒鳴ったり、叫んだり、声を張るといいんですが、普通のセリフが聞き取りづらかった。
表情や演技に関しては文句なく良かっただけに、声が通らないのは残念でした。

このあまねの嘘に乗っかり騒ぎ立てるマスコミたち。
話の内容により喰いついてきたり、離れていったり、話の続きを催促したり、あまねの嘘を助長していく。
これは現代におけるマスコミに対する批判だよね。
と同時に、そのマスコミが発する情報に踊らされている、現代社会の象徴でもある訳ですが。(笑)

また、あまねが他人の記憶を取って、自分の記憶にするというセリフを聞き、
真っ先に思い浮かんだのは大韓航空機の爆破事件を起こした金賢姫(キム・ヒョンヒ)。
彼女は、爆破テロを実行した北朝鮮の元工作員ですが、「蜂谷真由美」という日本名を名乗り、
日本語を話し、日本の文化、風習などについても学び、日本人になりすましていたというのが、あまねの役柄と重なってしまいました。
黒木華さん演じた”あまねに似た少女”が、あまねに「日本」を教えた、拉致被害者なのかなって思ってみたり。
「私が、私に、監視されてる」みたいなセリフあったよね?(笑)

銀粉蝶さん:帝の御毒見/帝の巫 
藤木孝さん:妃の御毒見/妃の巫 
自分たちは皇室容認の影武者だと言って、周りの人間を信じ込ませている変な男女。
火山のふもとの宿から忽然と姿を消した「性が倒錯した二人組」。
もぉ~、この二人が登場した瞬間、大爆笑しちゃいました!
本当に性が入れ替わってるよ・・・って。(笑)
銀粉蝶さんはサーベルを腰に挿し、勲章を付けた白い軍服のダンディな姿。
藤木さんも白のワンピース姿でキレイな”おみ足”を披露しててめっちゃくちゃ似合ってました。(笑)

この二人を見て、私が真っ先に思い出したのは「有栖川宮詐欺事件」ですかね。
元皇族の有栖川家の継承者だと偽り、結婚披露宴を開催して招待客から祝儀等を騙し取った事件です。
皇室の名を語る詐欺事件って今も昔も多々あったようですが、日本人にとって皇室は絶対的な存在なんでしょうね。
だから皇室の継承者とか言われると、よく知りもしない人物なのに、肩書きのみで信じ込んで、騙されるという。
そんな日本人の姿を見せ付けられたようでした。

そして、ラスト近くで、あまねの両親として登場した二人の姿は、北朝鮮から逃げてきた脱北者。
日本語の話せるあまねとは違い、言葉の分からない両親は自国へ強制送還されてしまう。
あまねが自分たちの娘だと知られないように、何も語らず連れ去られる両親。
自国にいても地獄、逃げても地獄だったのでしょうか・・・。

高田聖子さん:ミハル/ハルミ
火山のふもとで民宿を経営している3姉妹の長女。
この家には代々伝わる巻物があり、それをあまねがデタラメに解釈していくが・・・。
まず、舞台上に登場してきた時、その髪形で笑っちゃいました。(笑)
黒柳徹子風の丸く結った髪に、頭の上でプルプル揺れる、お団子状の髪が乗っかってるんだもん!
ムーミンのミーのようって言えば分かるかしら?(笑)
二人の妹たち(太田緑ロランスさん:ミハレ/ハレミ)(玉井夕海さん:ミハリ/ハリミ)も同じ髪型で、
動く度に頭上で揺れるお団子が、なんとも可愛らしかったです♪ 

で、最初は可愛いと思って見ていたこの髪型ですが、、、次第に「あるもの」に見えてきてから、怖くなりました。
原爆でのキノコ雲です。
唯一、原爆を落とされた国、日本。
長崎、広島に落とされ、アメリカに降伏した日本。
もし降伏しなかったら、第三の原爆が京都あたりに落とされていたらしいですね。
あぁ~だから3姉妹だったのかしらん?

Webで公開されていた野田さんのインタビュー記事。(ちなみにこちら
そこに書かれていた言葉に、今回の作品のベースを感じました。
「キリスト教、イスラム教には、神という絶対の存在がいる。日本では空白のポスト。だからオウムが現れる」

またもや難題をぶつけてきた野田さん。
もう一度観に行くので、その時にまた色々と感じられたらいいなって思います。

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コメント

私は

麗さん♪
今日観てきました!完敗しましたっ!

みんみんさん

あはっ♪
私もです。(笑)

ただなんとなく心に響くものはあったように感じました。
、、、なんとなくです。(笑)

また感想書きながら、自分の中で消化してみたいと思います。

一度しか見れないのが残念です!

感動でした!!私の野田作品の中ではかなり上位だねっ!!
どこが・・って言われたら困るんだけど
よく分からんが・・・・素晴らしかったです。
次の感想・・・お待ちしてます♪

かずりんさん

おぉ!
見に行かれましたか!
野田作品の中でも上位なんだね♪
なんか、色々な要素が含まれてて、
野田作品の中でもかなり強敵だったと思うけど、
後半のメッセージ性がかなり怖く感じたよ。

2度目観た後、どんな感想が飛び出してくるか、
自分自身でも楽しみです。(笑)

ようやくようやく感想をアップしました

2月の初日の麗さんのかろやかな感想を楽しく拝読していました。私は3/12に観劇予定だったのに前日の震災で公演中止で払い戻しとなり、千穐楽間際の28日に仕事帰りに当日券ねらいで観てきました。
観劇直後は野田さんの苦悩を受けとめることに精一杯でしたが、1ヵ月もたってしまったけれどようやく感想が書き上がったのでTBさせていただきましたm(_ _)m
震災後の再開にあたっては他の舞台よりもはるかに重苦しい作品ですしね。観劇後、若い頃から野田秀樹を応援してきた友人に聞いたところ、震災前の舞台では最後に火山を噴火させていたのを再開した舞台ではそこを変更して噴火はなくしたとのこと!初日はやはり火山は噴火していたのですか?
この作品にこもった野田さんの苦悩をきちんと受けとめて、私も過去の歴史を踏まえて生きていくことを続けたいし、震災からの復興と全国的な再生にやれることをやっていきたいと思っています。

ぴかちゅうさん

この芝居。
震災前後では、かなり印象が変わってしまい、
私自身、未だに震災後の2度目の感想が書けてません。
って、ただサボってるだけとも言いますが・・・。(笑)

ぴかちゅうさんは3/12に観劇予定だったんですね。
払い戻しとかご苦労さまでした。

>震災後の再開にあたっては他の舞台よりもはるかに重苦しい作品
本当にその通りですね。
このことについて、私も色々感じてました。
上演再開を決心した野田さんの想いを、
しっかりと受け止めようと思いました。

震災前には無かった、上演前のアナウンスや、
ロビーに置いてあった募金箱。
そしてこの芝居を演じている役者さんや、スタッフなどの
様々な思いを想像すると、なんだか胸が締め付けられるようでした。

今となっては記憶があいまいなんですが、、、
そういえば、ラストでは火山を噴火させてたと思います。

ぴかちゅうさんのボランティア活動の様子、いつも拝見しています。
私も自分のできる事で復興と再生に役にたてる事を、
やっていきたいと思います!

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11/03/28 NODA・MAP「信」シリーズ「南へ」の苦悩を受けとめる

毎日毎日疲れ切って帰宅し、一瞥しただけで放り出したり封も切らずに積みあがったりしているものも少なくない書類の山々。分別して処分しているけれど分別後に小さい山ができたりして(^^ゞ・・・・・・やっぱりシュレッダー買おうかなぁ。 さて、ひと段落して火の山の物語...
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