2009年の再演公演を観に行き、非常に感動したこの作品。
早くも再々演となり、、、今年も観に行きました。
「春琴」

やっぱりこの作品は素晴らしい!
観客の想像力をかきたて、目だけでなく、
耳や、匂い、空気感をも感じることができる極上の作品でした。
私的感想にご興味のある方はどうぞ。
2009年の観劇レポはコチラから。
谷崎潤一郎が執筆した「春琴抄」と「陰翳礼讃」をモチーフにした、この作品。
演出を手がけたのは、イギリス人のサイモン・マクバーニーという人物。
日本文学の代表作品であるこの物語を、外国の演出家が手がけるという事に、なんとなく”色眼鏡”で見てしまいがちですが、日本人以上に日本の様式美を知り尽くしてました。
逆に変な先入観がないので、日本人演出家が表現する日本の姿よりも、美しく感じたのかもしれません。
演出などに関しては前回と大きな違いはなし。
全体的に薄暗い照明や、簡易な小道具のみで、様々な場面を表現していました。
四角く照らした照明で小さな和室を表現したり、6枚の畳を巧みに移動させて部屋と渡り廊下を表現したり。
また角材をふすまに見立て、松の枝や、墓石、階段など。
ただの紙切れを震わせ、ひばりの姿を表現したりと、とにかく見る側の想像力を存分にかきたててくれます。
音響に関しても無駄な効果音は一切無く、水がチョロチョロ流れる音や、畳を摺り足で擦る音、三味線の音色に、ひばりの鳴き声は鳥笛、羽ばたく音は紙を揺らしてバタバタさせた音。
しかもその効果音は、出演者たちが全てこなしているという贅沢さ。
そんな中、一番の小道具は春琴の幼少期を演じた、浄瑠璃人形ですね。
深津絵里さん:春琴
髪を纏め上げ、黒のタイトスカートのスーツ姿で黒子に徹している前半部分。
幼年期の春琴を表現する人形を操り、セリフは深津っちゃんが発しているんだけど、まるで人形自身が話しているかのような錯覚をするほどの、一体感が素晴らしい!
時には甲高い声でケラケラと笑い、時には低く唸るような声で怒り、感情の起伏が激しい春琴の人格を見事に表現してました。
成長し大人になってからの春琴は自ら演じてましたが、気位が高く、盲目というハンデに臆することのない様子は絶品でした。
佐助との間に4人もの子供を儲けたが、誰1人として育てる事無く、すぐに里子に出した春琴。
単なる「性の捌け口(生理的必要品)」として佐助を抱いていた(あくまでも春琴が主導権)のか、多少なりとも愛情を感じていたのか・・・。
なんだかこの二人の関係性は、何度見ても謎が残ります。
チョウソンハさん:青年の佐助
前回に続き、今年もキャスティングされたチョウソンハさん。
先日拝見した「ザ・キャラクター」でのアポロンでは舞台狭しと走り回っていましたが、今回は完全に「静」の演技でした。
坊主頭で着物姿、まさに”丁稚どん”といった姿が妙に似合ってましたね。
春琴に対して異常なほど従順な佐助。
どんなに罵られても、暴力を受けても、決して逆らう事無く、生涯仕えた佐助は春琴のことを愛していたんでしょうか。
丁稚として奉公しに鵙屋家に迎えられた佐吉が、春琴の美しさに一目惚れしたのは分かるんですがね。(笑)
春琴と体の関係を持ったシーンはやっぱり印象深いです。
人形のパーツがバラバラになり、頭、手足、胴体が小刻みに動くのがなんとも艶めかしくてゾクゾクしました。
笈田ヨシさん:晩年の佐助
前公演では下馬二五七さんが演じていたこの役。
大病を患いながらも公演を続け、公演1ヶ月後に他界された下馬さん。
まさに命を懸けた演技で、私の中にも、今でも強烈な印象が残っているんですが・・・。
笈田さんの佐助も素晴らしかったです。
はんなりした大阪弁が、すごく耳に心地よく響いてきました。
「こいさんの足はちょうどこの掌に乗るほど小さく可愛らしかった」のセリフは、やはり印象に残ります。
この作品の中で、一番衝撃的なのは、火傷で顔に傷を負った春琴の姿を見ないようにと、佐助が自ら目を潰してしまうシーンですね。
原作本も読みましたが、描写がなんとも生々しくて、読みながら顔をしかめてました。
この目を潰すという行為も、「究極」だよなぁ~。
究極の「愛」なのか「忠誠」なのか、自分の中でもなかなか消化しきれずに、考えが堂々巡りになってしまいます。
「目しいになりました」という佐助の言葉を聞き、「ほんとうか?」と、素直に喜ぶ春琴。
その次の瞬間、二人は抱き合って感情をさらけ出すんだけど、何とも言えない感情が私にも湧き上がってきました。
幼い頃に盲目になった春琴。
お金持ちの家庭だったゆえ、わがまま放題で自分に逆らう者は誰もいない。
どんなに周りの人間が、美しいだの、三味線の才能があるだのと自分に傅いていても、心のどこかで盲目というハンデにかなりの”引け目”を感じていたのかなっとも思えます。
だから佐助が目を潰して盲目になったと聞き、同じ境遇になったことを素直に喜んだのかな・・・。
いずれにせよ、春琴と佐助の愛はあまりにも「究極」過ぎて私には難解です。(笑)
早くも再々演となり、、、今年も観に行きました。
「春琴」

やっぱりこの作品は素晴らしい!
観客の想像力をかきたて、目だけでなく、
耳や、匂い、空気感をも感じることができる極上の作品でした。
私的感想にご興味のある方はどうぞ。
2009年の観劇レポはコチラから。
谷崎潤一郎が執筆した「春琴抄」と「陰翳礼讃」をモチーフにした、この作品。
演出を手がけたのは、イギリス人のサイモン・マクバーニーという人物。
日本文学の代表作品であるこの物語を、外国の演出家が手がけるという事に、なんとなく”色眼鏡”で見てしまいがちですが、日本人以上に日本の様式美を知り尽くしてました。
逆に変な先入観がないので、日本人演出家が表現する日本の姿よりも、美しく感じたのかもしれません。
演出などに関しては前回と大きな違いはなし。
全体的に薄暗い照明や、簡易な小道具のみで、様々な場面を表現していました。
四角く照らした照明で小さな和室を表現したり、6枚の畳を巧みに移動させて部屋と渡り廊下を表現したり。
また角材をふすまに見立て、松の枝や、墓石、階段など。
ただの紙切れを震わせ、ひばりの姿を表現したりと、とにかく見る側の想像力を存分にかきたててくれます。
音響に関しても無駄な効果音は一切無く、水がチョロチョロ流れる音や、畳を摺り足で擦る音、三味線の音色に、ひばりの鳴き声は鳥笛、羽ばたく音は紙を揺らしてバタバタさせた音。
しかもその効果音は、出演者たちが全てこなしているという贅沢さ。
そんな中、一番の小道具は春琴の幼少期を演じた、浄瑠璃人形ですね。
深津絵里さん:春琴
髪を纏め上げ、黒のタイトスカートのスーツ姿で黒子に徹している前半部分。
幼年期の春琴を表現する人形を操り、セリフは深津っちゃんが発しているんだけど、まるで人形自身が話しているかのような錯覚をするほどの、一体感が素晴らしい!
時には甲高い声でケラケラと笑い、時には低く唸るような声で怒り、感情の起伏が激しい春琴の人格を見事に表現してました。
成長し大人になってからの春琴は自ら演じてましたが、気位が高く、盲目というハンデに臆することのない様子は絶品でした。
佐助との間に4人もの子供を儲けたが、誰1人として育てる事無く、すぐに里子に出した春琴。
単なる「性の捌け口(生理的必要品)」として佐助を抱いていた(あくまでも春琴が主導権)のか、多少なりとも愛情を感じていたのか・・・。
なんだかこの二人の関係性は、何度見ても謎が残ります。
チョウソンハさん:青年の佐助
前回に続き、今年もキャスティングされたチョウソンハさん。
先日拝見した「ザ・キャラクター」でのアポロンでは舞台狭しと走り回っていましたが、今回は完全に「静」の演技でした。
坊主頭で着物姿、まさに”丁稚どん”といった姿が妙に似合ってましたね。
春琴に対して異常なほど従順な佐助。
どんなに罵られても、暴力を受けても、決して逆らう事無く、生涯仕えた佐助は春琴のことを愛していたんでしょうか。
丁稚として奉公しに鵙屋家に迎えられた佐吉が、春琴の美しさに一目惚れしたのは分かるんですがね。(笑)
春琴と体の関係を持ったシーンはやっぱり印象深いです。
人形のパーツがバラバラになり、頭、手足、胴体が小刻みに動くのがなんとも艶めかしくてゾクゾクしました。
笈田ヨシさん:晩年の佐助
前公演では下馬二五七さんが演じていたこの役。
大病を患いながらも公演を続け、公演1ヶ月後に他界された下馬さん。
まさに命を懸けた演技で、私の中にも、今でも強烈な印象が残っているんですが・・・。
笈田さんの佐助も素晴らしかったです。
はんなりした大阪弁が、すごく耳に心地よく響いてきました。
「こいさんの足はちょうどこの掌に乗るほど小さく可愛らしかった」のセリフは、やはり印象に残ります。
この作品の中で、一番衝撃的なのは、火傷で顔に傷を負った春琴の姿を見ないようにと、佐助が自ら目を潰してしまうシーンですね。
原作本も読みましたが、描写がなんとも生々しくて、読みながら顔をしかめてました。
この目を潰すという行為も、「究極」だよなぁ~。
究極の「愛」なのか「忠誠」なのか、自分の中でもなかなか消化しきれずに、考えが堂々巡りになってしまいます。
「目しいになりました」という佐助の言葉を聞き、「ほんとうか?」と、素直に喜ぶ春琴。
その次の瞬間、二人は抱き合って感情をさらけ出すんだけど、何とも言えない感情が私にも湧き上がってきました。
幼い頃に盲目になった春琴。
お金持ちの家庭だったゆえ、わがまま放題で自分に逆らう者は誰もいない。
どんなに周りの人間が、美しいだの、三味線の才能があるだのと自分に傅いていても、心のどこかで盲目というハンデにかなりの”引け目”を感じていたのかなっとも思えます。
だから佐助が目を潰して盲目になったと聞き、同じ境遇になったことを素直に喜んだのかな・・・。
いずれにせよ、春琴と佐助の愛はあまりにも「究極」過ぎて私には難解です。(笑)
コメント
佐助と春琴
ぴらさん
この二人の関係って、、、
何度見ても難解だわぁ~。(笑)
>ただ、基本的には純愛だと思ってます。
純愛かぁ。
究極だよねぇ。
この作品は本当に素晴らしい!
またこういう作品と出会いたいもんですなぁ。
何度見ても難解だわぁ~。(笑)
>ただ、基本的には純愛だと思ってます。
純愛かぁ。
究極だよねぇ。
この作品は本当に素晴らしい!
またこういう作品と出会いたいもんですなぁ。
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§ 春琴
春琴
2010年12月10日マチネ。
再々演。
ちなみに再演を観た時の衝撃はこちら。
海外を回るとか回ったとか?
日本が誇る文豪の一人と
日本が誇るスタッフと日本が誇る多彩な俳優陣、
そし...
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こいさんと丁稚の間にはいろんな感情が複雑に絡まってるよね。
ただ、基本的には純愛だと思ってます。
こういう舞台があるから観劇やめられまへんなぁ(笑)